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竜王vsコンピュータ

BS11 の番組 「運命の一手・渡辺竜王vs人工知能ボナンザ」 を見た。
観た感想:
すっきり解りやすくまとまっていたし、コンピューターや将棋に興味を持たない人にも理解しやすかったのではと思う。ただそのどちらにも興味を持っていない人は、普通こんな番組は見ないだろう。
ただ、プロジェクトX風味な、ちとドラマティックな濃い目の味付けは、胸焼けしそうな重たさを感じたが。ちょっとボナンザを持ち上げすぎだった。

「人工知能」といっても、ソフトウェアなわけで、ということは今までの将棋ソフトも全て人工知能の類だったわけだろう。「ボナンザ」が「特別」というわけではない。
将棋ソフトは、あらゆる局面で、コンピュータらしくすべてを数値化(得点化)して、どの手を指したら点数で上回るかを膨大な計算をして決定している。
そして今回のボナンザは、その得点計算の価値観が今までとは若干異なっている。そして検索方法も他のソフトとは異なっているらしい。あと過去の棋譜をインプットするとそれらを分析して経験とし、今後の計算に生かして「強く」なるのだと。その辺が「人工知能」とNHKが名付けた理由か。

ただ過去の棋譜は全て一流の人間棋士の対局から生まれたものであり、その定跡や好手・妙手をコンピュータは分析するだけで、コンピュータが新手や妙手や定跡を生み出してはいないので、今のところ人間の方が(勝負がどっちに転ぶか解らなくても)まだ高みにいるのは間違いない。

対局の結果は予想通り、渡辺竜王の勝ち。ただ予想よりは差はなかった。
対局当日のネットの速報では、「竜王辛勝」とも「竜王快勝」とも書いたメディアもあった。対局直後のネットの検証では、ボナンザは迫ったものの竜王の一手勝ちで、常に竜王が優位を保った余裕のある勝利だとのことだった。俺も当日はそう感じた。
だが、今回の番組の検証や竜王のブログを読むと、ボナンザにも勝てそうな筋(展開)があったとのことだった。まあ、その一手自体はその展開になる前から、ボナンザが全く考えていない局面と思われるので、コンピュータの勝利は遠かった、とも言えるし、そこまで迫ったのだから、あと僅かだったとも思える。

実際、番組の中ではボナンザは中盤で「迷い」の手を指したらしい。ボナンザが予定された時間内(1手8分30秒だったか)で各手のその後の展開を全て計算し切れなかったので、読めないけれども可能性のある(よく解らない)手を選んだということだ。その辺の判断基準の決め方は、プログラムやプログラマーの性格にも拠るのだろうが、これからのソフトの行方として、なかなか興味深いテーマかもしれない。

そしてコンピュータのスペックが上がり、今までのさらに数十倍とか数百倍の計算が出来るのようになると、どうなるかはほんとに解らない。将棋は、9x9の升目・40個の駒と決定している以上、膨大ではあるが無限ではないので。
科学の世界で「神の計算機」があれば全てが予測できる(実際は不可能)という話があるが、将棋の世界はかなりの部分、CPUに計算されてきているのかもしれない。


あとは、今回の対局、持ち時間2時間というのは手ごろな長さではあるが、本気で「人間vsコンピュータ」の勝負をつけるのならば、持ち時間8時間あたりでボナンザにもっとしっかり読ませる(計算させる)ようにすべきだっただろう。そうすれば8分30秒を越えてボナンザがさらに先を読めたわけだ(結果がどうなるかは解らんけども)。
仕掛けたのが、目立ちたがり屋で策士の米長会長で、相手に将棋界の看板・渡辺竜王を選んだことからいっても、純粋な勝負よりも人間側が勝つことを見せるデモンストレーションだったのかなと少々うがった見方もしたりして。

ただ今回の勝負で、コンピュータがかなり強くなったのは証明されたので、持ち時間や条件次第ではプロ棋士の下位の者や女流棋士はあっさり負ける気がする。
そして男性トップ棋士が敗れる日もそう遠くないのだろうが、それは将棋というゲームや文化に一つの大きな楔が打ち込まれる日であり、将棋で飯を食っている連盟としては何としてもそれを避けねばならない、という思いだろう。
現在、プロ棋士は連盟の決まりとして、無断でソフトと対局してはいけないので、ソフト側は縛りのないアマチュアのトップらを倒して実績を上げて、プロ側に対局を受けさせるようプレッシャーをかける必要があるが、純粋なソフト開発者の向上心はさておいて、さて多くの将棋ファンは、そんな運命の日を望んでないのではないか。
まあそれでも運命はひたひたと歩み寄ってくるわけだが。

「将棋は斜陽産業」と言った期待の若手がいたが、さすがに先を読む目は確かだなw

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